2017年8月19日土曜日

【長いお別れ】


帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。
妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。

東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、十年ほど前から認知症を患っている。長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、娘が三人。孫もいる。

“少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症。ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう、迷子になって遊園地へまよいこむ、入れ歯の頻繁な紛失と出現、記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、終末のひとつの幸福が描き出される。著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集。

                                       amazon 内容紹介より

この本の前に読んだ盛田隆二さんの『父よ、ロンググッドバイ』と一緒に
推薦された認知症介護の本です。



残りページの厚さが薄くなって、そろそろ終わりが近い、読み終わりたくない、
しかし読後、読んでよかった、と久々に思える本でした。

認知症の話ですがユーモアにあふれていて、サクサクとお読めました。
妻の強さと「この人が何かを忘れてしまったからといって、この人以外の何者かにかわってしまったわけではない」という言葉が心に残りました。
温かい気持ちになれる良い本でした。

少しずつ記憶を亡くして、ゆっくりゆっくり遠ざかっていくことから、
アメリカでは認知症の事を「長いお別れ」と呼ぶらしい。

レイモンド・チャンドラーのハードボイルドの名作「ロンググッドバイ」。
本も読みましたが、断然映画が良かった。
昔TVのロードショーで観たときから
監督のロバート・アルトマンや主演のエリオット・グールドのファンになったことを思い出しました。